ITエンジニアの客先常駐とは、働き方やキャリアという点で、実際どうなのでしょうか。
エンジニアには、客先常駐で働いたり、自社開発企業での就業など、さまざまなワークスタイルがあります。そして「客先常駐は悪い」等評価されているのも実際に存在しています。
ただ、キャリアの考え方、戦略性があっての客先常駐での働き方であればメリットとなる事もあります。
今回は、実際に客先常駐や自社開発企業で働いてきた経験を記載しキャリアについて考える機会となればと思います。
客先常駐とは?
転職サイト、IT業界の求人などで「客先常駐」というワードを目にすると思います。
客先常駐とは「正社員や派遣社員として所属している会社から派遣されて、別の企業のオフィスに出勤して働く」勤務形態です。
所属している自社からの職務命令で客先会社へ派遣され以後、毎日客先会社に出勤します。日々、客先会社の指示のもとでシステムの設計であったり、プログラマーであればプログラミング、インフラエンジニアだったらインフラ構築、運用などの業務に従事し、自社には顔を出すことはほとんどありません。
しかし最近では、月に1回帰社日を設け午後に自社に帰り日々の業務の報告や困っている事、次どんな案件にチャレンジしたいか等を自社の担当の営業の方へお話し夜は帰社した自社の社員と食事をしながら交流を深めるなど企業努力をしている会社もあります。
IT業界に客先常駐が多い理由とは
ITの仕事は、顧客の要望に応じたシステムを開発したり、保守・運用したりすることですから、外部に機密情報がもれないようにするためにセキュリティ、コンプライアンスがしっかり整えられている体制のもとで業務を遂行する事が、情報漏洩の対策として安全であると考えられている為です。
またシステムトラブルが起きたことなどを考えると、ITエンジニアはすぐに対応できるように、客先常駐が望ましいことも理由の一つです。
そういった理由から、顧客のオフィスに常駐するスタイルが一般化されるようになりプロジェクトの規模が大きくなればなるほど、この傾向は強くなります。
客先常駐のメリットとは
客先常駐という言葉には「常駐はツラい」「派遣と一緒だ」「組織に属している実感がない」といった後ろ向きなイメージが付きまといますが、メリットもあります。
大手企業やベンチャー企業などで様々な経験を積めることができる
客先常駐は、数ヵ月から数年スパンで様々な職場を経験することができる為、その現場で使用されているプログラミング言語(PHP、JAVA等)やフレームワーク(Laravel、Struts等)、クラウドインフラ(AWS、GCP等)などを勉強する機会に恵まれます。
これは、自社内だけで働く場合には得られない大きな経験になります。また、もしも会社の直受けの案件に参画でき、上流工程から関われる機会があれば、マネジメント能力も身に付ける事ができます。
未経験でも、客先常駐の企業は入社しやすい
自社の社員の大半が客先常駐で働いている中小SIerは、人手の確保を重視することから、エンジニアの募集は「未経験歓迎」の企業が多くなります。
未経験でも入りやすいというのは、IT業界を目指す人にとっては、大きなメリットといえるでしょう。
そして、未経験での案件初参画の場合はとても不安が多いと思いますが、自社から複数名参画している場合は、質問などしやすいので精神的に安心して業務を遂行できるメリットもある場合があります。
IT資格を取得すると報奨金がもらえる
難易度が高い資格を取得した場合、よりよい条件で様々な企業へ参画が可能となりますので自社企業から報奨金を頂く事ができる制度が多くの企業であります。
資格取得するとやる気を評価されたり業務遂行レベルが上がり客先の担当者からの評価が上がれば給料がアップする事もあります。
案件がない場合でも、待機となり給料がもらえる
雇用形態は正社員なので派遣先の都合で派遣契約が終了して仕事がなくなっても、
派遣元から一定額の給与が保障されることになります。
ただし、待機期間があまりに長かったり、派遣先をより好みし過ぎると解雇になるケースもあります。
出会いが多く、コミュニケーションスキルが向上する
客先常駐は一定期間で現場が変わるため、一緒に働くエンジニアから常駐先企業の担当者まで、様々な人と出会うチャンスがあります。
うまく関係を作ることができれば、今後のキャリアにもつながる事もあったり、初対面から人間関係の形成を何度も経験するので自然にコミュニケーションスキルが身につきます。
客先常駐のデメリットとは
上で挙げたようにメリットも多くありますが、常駐先の環境であったり、自分のモチベーションの置き所次第では、デメリットも少なくありません。
技術力が身に付かない場合がある
もしも長く同じ常駐先企業にいた場合、その企業で必要な技術しか知ることができません。
そうなれば、日々進化するIT技術に触れることができずスキルが向上しないのでモダンな技術を使用している案件に参画できない危険性が考えられます。
そのような状況に陥ると転職も厳しい状況に追い込まれるので収入のアップできない可能性が高くなります。
エンジニアの評価が曖昧で、モチベーションが低下する
客先常駐の場合、エンジニアの評価制度が難しく客先の担当者の評価を自社の担当営業が聞いて評価することになります。
実際に評価する人間が見ていない状況で評価するので正しい評価にはならない可能性もあります。そのような人事評価に疑問や不満を持ちやる気を失い、転職につながるケースがあります。
外部の人と見られ、なんとなく壁を感じる
他社から協力会社としてプロジェクトに参画するので自社の社員に比べると接し方に壁を感じることがあります。
能力をシビアに評価されますので使えないと判断されたら契約を切られます。過去に数週間で退場となる人もいました。
プロダクトの全体像が分からず、興味がもてない
大きいプロジェクトであればあるほど、自分が担当する領域がごく一部となりますので
全体がよく分からず興味や愛着を持つことができない場合がる。それによってモチベーション低下につながり、成長曲線が鈍くなる。
客先常駐特有のストレスとは
客先常駐は数カ月から数年単位で現場を変わることになります。
現場が変わると触れる技術が変わるので一からキャッチアップしながら業務を遂行しなければなりません。
業務後プライベートの時間を勉強に充てなければならない場合もありますのでそれがストレスに感じる人もいるようです。
人によっては社員のように溶けこんでいる方もいらっしゃいますが
やはり外部の人間として一定の緊張があることは間違いないでしょう。
人間関係も一から形成する事になりますので、人見知りな性格はうまくコミュニケーション
できるまで相当ストレスを感じながら業務を行う事になります。
客先常駐の働き方より、自社開発企業が人気な理由とは
自社開発企業とは、自社でサービスを展開しており、企画から開発業務を自社で行う企業です。昨今、客先常駐から自社開発企業へ転職したいITエンジニアは急増しております。
私も以前、客先常駐から自社開発企業への転職活動を行っている時は、
自社で腰を据えてユーザに喜ばれるWEBアプリを開発したい、労働環境がいい自社開発企業で生き生きと開発業務に励みたいという願望を持ちながら転職活動を行っていました。
そして、自社開発企業へ転職に成功し実際に働いてみると以下の点が良かったです。
開発業務だけでは無くサービスの企画から携われる
プログラミングやインフラ構築など開発業務だけではなく、自ら開発してみたいシステムを提案して会社に認めれもらえるとプロジェクトを立ち上げる事ができ、企画から開発までさまざまな領域を経験することにより大幅な成長ができます。
絶対的な納期はないのでスケジュールの調整がしやすい
自社サービス開発でももちろんサービスのリリース日はあらかじめ決まっていますが、
客先常駐のように納期ありきではなく、作っていく途中で問題があったり改良点が出てきたりした場合はある程度の融通がきく場合が多いです。
リリース後のユーザーの反応をシステムに反映し改良できる
実際に、お客様に利用していただき、「ここの箇所が使いづらい」等ご指摘を頂くことがあります。そういったユーザーの反応を加味して、「次はここをこう変えたほうがいい」と改善していけるのは自社開発の良い点だと思います。
人事評価に公正である
客先常駐とは違い普段、仕事をしている状況を見ている上司からの評価であり、部署全員の評価者が同じなので割と公正な人事評価なのではないかと思いますし、フィードバックをして頂けるので自分の課題を第三者の目で指摘して頂けるので貴重な機会だと思います。
しかし、「自社開発へ行けばハッピーになれる」と過剰な期待を膨らませていると、
会社それぞれ社風がありますのでとギャップを感じて「こんなはずでは。。」と悩んでしまう可能性がありますので過剰な期待はしないほうがいいかもしれません。
まとめ|客先常駐・自社開発、決め手のポイントとは「自分のキャリアに向き合うこと」
長期的なキャリア形成という観点では、常駐先がコロコロ変わってしまうことが1つのネックとなります。
もちろん1つの派遣先に長くいられることもありますし、常駐先が変わっても、これまで培った経験を深掘りできる可能性はあります。
ただ、派遣先が頻繁に変わるだけでなくそこで活用されるスキルも全然違うものだったりすると潰しの利くスキルが身につかない場合もあります。
そこで、運に左右される可能性を低くする為に、身に付けたいスキルや長期的キャリアを自分で決めておくことをおすすめします。
例えば、自社の担当営業へPHPを扱っている案件に参画したい等と伝えておけば次、現場に移る時にPHPを扱っている案件に参画できる可能性が高くなり、ある程度自分でキャリアをコントロールできる場合が増えるようになります。
また、自社開発企業へ転職するにはどんなスキルが必要なのか、どんなスキルを身に付け
転職活動の武器とするのかを考えながら自分のやりたい案件を明確に決め担当営業に伝えておくことが少しでも自分の理想とするキャリアを歩む可能性を高めるのでぜひ実践してみましょう。